医療・介護・福祉、それぞれの看護現場の特徴・働き方をインタビュー!
医療・介護・福祉で働く看護職の方々の働き方と魅力を発信しています。 それぞれの職場でのやりがいとライフスタイルに合った働き方がイメージできますよ!
病院看護職
経歴をお聞かせください。
京都以外の病院で働いていましたが、結婚を機に京都へ移り、現在の病院で勤務して10年近くになります。 2人の子どもを育てながら働いています。1人目を出産して産休後、病院でのパート勤務3年を経て正職員になりました。 その後2人目の出産を終え、産休明けの今年3月末に復職したばかりです。
2人の子育てと病院勤務は大変ですか?
病院の保育所を利用しています。生後6カ月から預かってもらえます。 民間の保育所は入所希望者が多くて入れないこともありますが、病院の保育所はすぐに入ることができ、とても助かっています。
病院は福利厚生が充実していますか?
女性の子育て支援は時代とともに改善され、制度も整ってきています。
救急病院では看護職でも高い医療知識やスキルが求められると思いますが、教育研修体制についてはいかがですか?
どの病院でも研修にはかなりの時間を取っています。全体研修・部署別の研修など、充実しています。
病院勤務を選ばれた魅力は何ですか?
学ぶことが多いからでしょうか。患者さんや職場の仲間から学ぶこと、研修や勉強会で多くの知識を得て、自分を高めることができます。
結婚と二度の出産のブランクを経ながらも、ずっと看護職を続けてこられた秘訣は?
辛いことがあったとき、その一瞬だけ辞めたいと思うことはありますが(笑)、そう深刻にはないですね。相談にのってくださる先輩の存在もありますし、結婚や出産のときにも、「また戻っておいでね」とやさしい言葉をかけてくださいました。同じママさんナース同士でもよくアドバイスし合ったりして、お互いの立場を理解しながら働くことができるのも大きいですね。
対患者さんとしてのやりがいは?
患者さんと生活の時間を密に接しているので、その中でのコミュニケーションで教えられることが多いですね。 患者さんから元気をもらったり、人生の先輩から子育てのアドバイスをいただいたり、有難く思っています。
復職を考えておられる看護師さんに向けてアドバイスを。
あまり頑張りすぎないことですね。一人ではもたない仕事です。 いろんな人の助けをお借りし、制度も利用して上手に甘えていくことも大切ではないでしょうか。
訪問看護ステーション管理者(Aさん) 看護職(Bさん)
経歴をお聞かせください。
(Aさん)熊本の看護学校を卒業後して病院の看護職として働き、7年ほど専業主婦をしていました。ちょうど職場復帰を考えていたころ、キュブラー・ロスの『死ぬ瞬間』というターミナルケアの本に感銘を受け、自分の仕事はこれしかないと復職しました。 パートで働きはじめたのですが、7年も現場を離れていると点滴ひとつできなくなっていて、ブランクを埋めるために多くの研修を受けました。また、当時は准看護師でしたので、病院で働きながら正看護師の資格を取りました。 その後、在宅のホスピスケアを目指して退職し、いくつかの医療現場で修行を積んだ後、当ステーションを開設しました。
訪問看護の業務はどのようなものですか?
(Aさん)介護保険法や健康保険法で要支援・要介護の認定を受けた方が主な対象で、患者さんはガンや厚生労働省が定める難病、精神疾患の方もおられます。小さいお子さんから高齢者まで年齢もさまざまです。 医師からの指示書に従って在宅療養中の患者さんを訪問し、日常生活のお手伝いから、投薬、点滴など看護職本来の医療行為まで幅広く行います。
求められる人材は?
(Aさん)まずは思いやりがあって、やさしいこと。在宅では自分で判断しなければならない場面も多いので、責任感があり、自信を持って対処できる人が訪問看護師に向いています。背負っているものが多い分、やりがいもあるのが在宅です。
Bさんはなぜこの職業を選ばれたのですか?
(Bさん)子どものころ、祖母がいる環境で育ったので、おばあちゃん子でした。また、もともとおじいちゃんおばあちゃんが好きだったことから高齢者福祉に携わりたいという気持ちがあって介護の道へ進みました。 働きはじめると看護職の方が業務範囲が広がることが分かり、准看資格を取りました。最初に担当した患者さんが「家に帰りたい」とおっしゃっていたのを聞いて、そういう人たちをサポートできたら、という想いから訪問看護を選びました。
生涯現役ですね。
(Aさん)はい。私はいくつになっても学び、挑戦し続け、現場で働いていたいです。私の訪問する気配や声を聞いただけで患者さんの体調がよくなったと言っていただけたりするが嬉しいですし、意識のない方にも明るく声をかけて丁寧にケアをすれば、本当にお顔の表情が穏やかになるのを感じます。 諦めずに最後の最後まで患者さんの生命に寄り添って、丁寧にケアをしようという気持ちになります。
「看取り」は非常に大きなテーマといえますね。
家で臨終を迎えるということは、家族に死とは何かを教えること。お祖父さんの死は孫たちに命の終わりを教えます。私たちは家族が見守る前で死後の処置を心をこめて丁寧に行い、それを見た家族の方々はとても喜んでくださいます。 看取った家族が前向きに生きていけるケアが私たちの目指すところです。それがまた看護を続ける力になっています。
高齢者・障害者福祉施設看護職
経歴をお聞かせください。
九州の生まれで看護学校を卒業後、大学病院に勤めていました。 結婚直前に義父が脳内出血で倒れました。私が脳外科の看護師ということで、程なく義母から介護を託され、仕事を辞めて8年近く家で義父の介護をしました。
今でいう介護離職ですか?
30年以上も前のことなので、サービスが何もなく苦労しました。外出するにも、介護保険もありません。昼夜逆転した父をなんとか昼間起こしてくのも、左半身麻痺の父をお風呂に入れたりということも大変でした。そういう経験の中で在宅サービスでの復職の道を探しました。介護をしながら保健所でパート勤務から始め、デイサービスに7年くらい携わりました。 その後、入所系や相談支援を知りたいと思い、家から近いこちらの施設で勤務するようになったのが平成11年でした。
病院の看護職から福祉現場を経験して
病院の中で先端医療を学んでいきたいという人もいるでしょうし、入所系の施設で看護をしていきたい人もいるでしょう。 ここではなかなか先端の医療にふれることはないけれど、患者本人の持っておられる「治す力」に添っていけるような看護というのも魅力だと思っています。 本人が自分の病気と向き合って、本人の持っている力をこちらが援助する、そして病気とつき合っていくということが、ここではできると思います。
入所施設における看護師の業務の特徴とは?
特別養護老人ホームの入所者の多くは、自分の病気に向き合うことが困難な認知症の方です。介護保険施設ですから基本的には要介護状態になった病名があって、例えば脳内出血や内蔵疾患、関節症などを合併しておられたりします。
ここでは急性期治療を行うことはありません。制度上は在宅に帰るとされていますが、基本は在宅で介護ができなくなった方々がここで終身生活をされる場所であり、看護職は介護職や栄養士、機能訓練士らと連携して、利用者の日常の体調管理を行います。利用者といちばん密に接し、毎日の生活のケアをしているのが介護スタッフで、私たち看護職、医療職は、その下支えとしています。 基本は利用者の体調に異常があるときの対応ですが、高齢者は体調の急変が頻繁にあるため、その予兆の早期発見が大切です。 また各利用者の持病や過去の病歴を把握し、そこから起こるであろう日常生活に支障をきたす問題と対策をあらかじめ介護スタッフに伝えておくことも重要な仕事です。
言葉でコミュニケーションできない方は、表情が大切なコミュニケーション手段のひとつです。ケアをする側が不安な表情では、入所者も不安になられます。自信と心のゆとりを持って介護ができるよう、看護師が医療の知識でサポートしています。自分の知識と経験の総力をあげて考えるところが、入所での看護の醍醐味でもあります。
ここでの看護職はどのような方が適任ですか?
人としての経験も病院勤務の経験もあり、ちょうど適任だと思います。子育てを終えて復職したいという方が最適ではないでしょうか。ここから復帰して訪問看護などへ行かれてもいいでしょうし、ステップアップして急性期の病院へ行かれた方もおられますよ。
利用者の人生の終焉に関わるターミナルケアも入所の特徴ですね。
人の人生にまるごと向き合える、その終末にご家族とともに関われるのは有難いことだと思います。そこでどんな言動をすべきか、自分の人間性が問われるところでもあります。 ご家族が親や祖父母の死に向き合い、その時をどう過ごすべきかがまだわからず戸惑っておられるとき、枕元で私たちと話すことによって思い出が甦ったり、気持ちが落ち着いたりもされるようです。人の一生も終わりよければすべてよし、と愛しさのなかで最期を迎えられ、看取り終えた人たちも元気に生きていかれます。そこに一緒に付き合わせていただける私たちは本当に幸せです。
障がい者支援施設看護師
看護師になろうと思ったきっかけは?
母が看護師で小さい頃から働いている姿をみてきました。 そして進路を決める時になって「手に職があることはとても良いこと」と勧められたことがきっかけです。
経歴と休職された後の復職について
看護学校を卒業後、その学校付属の病院に勤務しました。そこで結婚、子どもを授かり夫や義父母の協力があり、2人目までは頑張っていましたが、3人目を授かり夜勤が難しくなり一旦退職しました。 その後1年間ほど休職していたのですが、長く現場を離れてしまうと復帰するときに不安かなと思い、病院時代の元同僚から紹介された病院でパート勤務をしました。ただ、車で片道40分の通勤はやはり遠く1年で退職することになりました。 その後、1年足らず、こちらの求人があり家から近く時間も融通していただけそうだったので応募しました。
病院と福祉職場のお仕事を経験して違いは?
病院の仕事は治療が中心になるので良くなれば退院・・・と日々入退院があって流れが速いのですが、施設は利用者さんの入れ替わりもあまりなく、一人ひとりの方とじっくりとかかわることができます。流れがゆったりとしていることが一番の違いでしょうか。 病院とちがって、施設は利用者さんの生活の場です。ご家族の方から一時帰宅の時の様子なども聞いて、支援員さんともその内容を共有しながら、その方が安心して生活していただけるよう考えています。ここでの看護師の勤務時間は、9時~17時45分が定時で夜勤はありません。
障がい者支援施設での看護師の業務の特徴は?
この施設には知的障がいのある方が50人入所されており、平均年齢は55歳、看護師は常勤1名とパート1名です。支援員は、常勤23名とパート・夜勤の人を入れて常勤換算で30名位です。このスタッフで入所の方だけでなく、日中一時支援や短期入所の利用者の方も看ています。
看護師の仕事は、入所者・利用者の方々の健康管理、服薬管理、必要に応じて医療的なケアや看護処置などがあります。病院では病気や怪我の種類によって診療科が分かれていますが、こちらの施設では、一人ひとりの障がいの内容が異なるので、毎日一人ひとり顔色や全身状態をみて、ある程度の判断が求められます。色々な気づきの中で利用者さんから教えられることも多く、大変ですが、今までは関わることがなかった分野も看ていかないといけないので、すごく勉強になります。
常駐ではありませんが、協力医療機関の医師が常に相談にのってくれる体制になっていますので、スタッフと協力しあって相談し判断して、利用者さんの状態を把握するようにしています。緊急事態で夜間に連絡が入ることもありますが、なるべく夜間に起こり得ることは日勤のうちに医師から指示をもらっておいて、スタッフ間で対応を共有しています。
障がい者支援施設でのお仕事のやりがいは?
知的障がいの方は、体調不良時であっても自分でしんどいと言えなかったり、苦痛があっても表現できなかったり、体調の変化に気づいておられない方もおられるので、普段の様子をしっかりと見て、変化があった時はこちらが早く気づいて対処することが大事です。医療機関を受診した時に、医師にどれだけ代弁してあげられるかということも大切な役割です。
医師は、普段の利用者さんの様子をよくご存知ではないので、こちらである程度アセスメントをして、それを先生に伝えて診てもらうことになります。その方の障がいの特性や体調をよく理解し、「いつもと何かが違う」というところに早く気づいて、最も長く普段の様子をみている支援員さんや協力医療機関の医師と相談しながら、その方にとって最善の方法を考えていく・・・難しいけれどそこが大きなやりがいでもあると思っています。
毎日一人ひとりの方とじっくり関わることでその方の個性もよく見えてくるし、その方を尊重して支援員さんと一緒に"その人らしい人生を豊かに送っていただける"ようにサポートしていけることが大きな魅力だと思っています。
未就業看護職の方々に対して。
病院以外でも看護師を必要としている場がたくさんあると思いますので、是非資格を活かして下さい。
通所リハビリテーション事業所看護職
看護師になろうと思ったきっかけは?
母から「これからは女性が手に職をつける時代だから、専門職を目指したらどうか」と言われ、看護師を志しました。子育て中は4年間休職しましたが、その後はずっと看護師として働いています。
休職された後の復職について
子育てや主婦業との両立のために、最初は保健所の看護師としてパート勤務をしていました。その後、療養長から高齢者介護の魅力を聞く機会を得てここで働くようになりました。
高齢者介護のどのようなところが魅力ですか?
高齢者介護をしていると、1分1秒に追われているだけが仕事ではないことに気づきます。その方その方に合わせて仕事をする、これが本来の看護のあり方だと思います。日頃の業務に追われて休職された看護師さんでも、こういうゆったりとした時間の中でのデイケアという職場を知れば、「ああ、ここならやっていける」と思われるかもしれないですね。
デイケアの看護の特徴とは?
デイケアは利用者の生活と密着した医療であり、それぞれのご家庭に帰られた後でも同じような生活が送っていただけるようにするためには、過剰看護になってもいけません。ひとりの利用者に看護職、理学療法士、介護職など多職種が関わっていますが、看護職は利用者の様子をしっかりと観察し、少しの変化も見逃さないで介護職に伝えることが重要な仕事です。体の不調や変化がどこから来ているのか、その原因をしっかり判断することで、他の職員も安心して仕事ができます。
デイケアのリハビリテーションの特徴は?
看護師が付き添って行うのは、姿勢改善や、椅子に座ったままの軽い運動、呼吸や発語・会話をしやすくする胸郭運動など、日常の生活動作を回復させるものです。その他、痰を出しやすくする練習、どの姿勢が身体への負担をより軽くするかといったポジショニング、褥瘡ができない工夫をしています。より高度なリハビリは理学療法士が担当します。塗り絵などの認知症予防のリハビリもしています。利用者が楽しみながらリハビリに取り組んでいただくこともデイケアの特色だと思います。 利用者に楽しい時間を持っていただいたり、大勢の中に参加していただいたりして「あなたが今ここにおられることをみんなが大切に思っています」という気持ちをお伝えするようにしています。
子育てをしながらで、辛かったことはありますか?
子どもが保育園のころ、仕事で遅れて迎えに行くと、ひとりでぽつんと待っていたときは胸が痛みました。親としてこれでいいのかと悩みました。でも保育園の先生が「お母さんの頑張っている姿は3歳児にも分かりますよ。しっかり子どもさんを抱きしめてあげれば大丈夫。お母さんは何も気にすることはないですよ」と言ってくださったので、その言葉に救われました。
デイケアでの勤務時間は?
デイケアは勤務時間が決まっているので、休みも比較的取りやすいですね。夜勤もありませんし。
通所リハビリで働き続けておられる原動力はなんですか?
ご家族から感謝されることが大きな力になります。デイケアにただ来て帰っていただくのではなく、私たちはその間、利用者がどんな背景を背負っておられるかなども見ながら接しています。例えば、沈みがちな方を見つけたら、なぜでしょうとご家族に心当たりを尋ねてみます。ご家族は「そんなこと全く気付かなかった」とおっしゃることもよくあります。利用者さんはご家族に気を使ってあまり自分のことを話されないこともあるので、看護師が利用者と会話をして、その情報をご家族に提供するという橋渡しもしています。
これからもずっとここで働き続けていかれますね?
はい。このデイケアで働いて高齢者の方を大好きになりました。ひとりひとりに深く寄り添いながらの看護、少し顔を見ないと「寂しかったよ」と言っていただいたり、「ありがとう」と言っていただける幸せを感じながら働ける場所です。